十一日目

 押井守の『すべての映画はアニメになる』を読み終える。

すべての映画はアニメになる[押井守発言集] (アニメージュ叢書)
 

  押井監督の作品論を、断片的にでも知れたということは大きい。すべての作品の解説が載っているというわけでもないので、押井守の入門書としては不適だが、ある程度作品を知った上で、理解を深めるために読むならば最適。ほぼ全編が過去の対談の再録なので、宮崎駿富野由悠季と言った著名人と、どんな対談を繰り広げてきたのだろうという感心を満たすために一読するのも良いだろう。

 その中で特に興味深いのは宮崎駿との対談だ。基本的には押井作品への宮崎駿の批判に対する受け答えなのだが、最初の『うる星やつら オンリー・ユー』についての対談では、後のページではボロクソに言われたと書いてあるにも関わらず、宮崎が押井へ理解を示す内容となっている。「編集が上手くまとめたんじゃないか」と、ちょっと邪推してしまうな。

 

 押井は『オンリー・ユー』が映画として失敗だった事は、本書に限らず何度も述べられているが、この「ただのテレビシリーズの拡大版であり、映画になっていない」という感覚は、劇場作品というものの特権がどんどん無くなっていったのと同様に、制作者にはあまり意識されなくなってしまったように感じる。劇場版を家のテレビで見ると、「尺以外はテレビシリーズと変わらないよね」と感じることが、最近は特に増えたように思える。劇場で見るなら"映画"足りえるのなら、それでいいという気も、一方ではしなくもないが。